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【コラム】いきなり走らないで!裸足ランニングを始める最初の一歩

最近私の周囲では、“裸足ランニング”に興味を持たれるランナーが増えています。恐らく、先月からスタートしたドラマ『陸王』の影響でしょうか。ドラマ内では“裸足感覚”や“ミッドフット着地”という言葉がよく用いられ、これが怪我しない走り方に繋がるといった取り上げられ方がされています。

私はかれこれ4年ほど裸足ランニングを実践しています。実感として、確かに怪我しない走りは身に付くのでしょう。だいたい月600km走りますが、お陰さまで怪我とは無縁に走り続けています。また、フルマラソンでのサブ3、100kmでのサブ10といった記録も裸足ランニングを始めてからのもの。すべてが裸足のお陰とは言いませんが、悪いものではないようです。

いきなり裸足で走ると怪我するかも!?

素足はもちろん、VibramFiveFingersやMUTEKI、ルナサンダルなど、裸足感覚で走れるシューズなども増えています。一時期のように爆発的な人気とは言いませんが、それでもユーザーは少しずつ増加傾向にあるのではないでしょうか。私も素足で走るのは一部のみ。その他のトレーニングやレースでは、やはり前述したようなシューズ類を履いています。

しかしこれを“ランニングシューズ”と捉えてしまうと、痛い目を見るかもしれません。つまり通常のランニングシューズのようにいきなり日々のトレーニングで多用すると、怪我などのリスクがかえって大きくなるのです。

素足および裸足感覚シューズは、着地した際に地面からの衝撃を思いっきりダイレクトに受けます。一般的なランニングシューズは、この衝撃をソールによって和らげていました。そのため、足はその衝撃を受け止めきれる強さではありません。

最初は足が疲労していないため、恐らくある程度の距離・スピードで走れてしまうでしょう。しかし衝撃による疲労等の蓄積はこれまで以上に大きく、あっという間に怪我・・・なんていう可能性があります。感覚として、同じスピードで走った際の衝撃度合いは、2〜3倍といったところでしょうか。これは、例えばグローブを外して野球のボールを受けるようなもの。慣れてくればある程度はキャッチできるようになりますが、いきなりバシバシ取り続ければ、手のひらは腫れ上がってくるはずです。

私も初めて裸足で走った際、この“痛い目”に遭いました。実際には素足ではなくVibramFiveFingersを履いていたのですが、アキレス腱回りが傷んで走れなくなってしまったのです。それから暫くは裸足を封印。少し経ってから、まずウォーキングに導入しました。ウォーキングなら走るより着地衝撃は少ないですし、しかし足裏から感じ取れる着地バランスなど、ある程度の恩恵は受けられます

素足や裸足感覚シューズは、別にそれだけで怪我せず速く走れるものではありません。あくまで使用を重ねることにより、「怪我せず速く、楽に走れる“走り方”が身に付くもの」です。大きな着地衝撃を受けるから、自然と衝撃の少ない効率的な(蹴らない、跳ねない 等)走り方に変わっていく。着地した瞬間に足裏の感覚で“どこで地面と接しているか”が分かるので、左右前後に偏りのない安定した着地が実現できるようになる・・・など。継続していくことで、脚はソールに守られなくても、ダイレクトな着地衝撃に耐えられる強さが培われていくことでしょう。

ですから、最初はゆっくりと。走らず歩いたり、ランニングドリルに取り入れたり。走る場所もアスファルトではなく、芝生や体育館などがオススメです。そこから少しずつ走り、スピードや距離を調整していけば良いのです。私の場合、半年ほどでシューズとほぼ変わらぬ走りができるようになりました。現在は1km3分台のペースでも問題ありませんし、ルナサンダルやはだし靴下で100kmマラソンも走り切れます。結果的に記録が伸び、怪我しなくなるのですから、多少時間を掛けて取り組んでみる価値はあるのではないでしょうか。即結果を残さなければいけないプロアスリートは別ですが、長くランニングを楽しみたいという方は、焦らずじっくり積み重ねていってください。

三河賢文
WILD MOVE.LAB編集長。“走る”フリーライターとして、スポーツ分野を中心とした取材・執筆・編集を手がける。また、マラソンやトライアスロン競技に取り組むほか、ランニングコーチとしても活動。3児の子持ち。ナレッジ・リンクス(株)代表。